asylum piece

全ての創作物についてのあれこれ

Webcoreに分類される音楽とは一体何なのか?その謎を解明するために我々調査隊はアマゾンの奥地へと向かった――。

こんにちは。

 

今回はWebcoreについて書いていこうと思います。

Webcoreとは何か。

そんなのは置いといて。

先ずは一曲聴きましょう。音楽は聴いてなんぼですからね。

 

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Webcoreと言えばこれ、という代名詞的な曲です。

少し不気味だけどどこかドリーミーで心地よい、不可思議な雰囲気が漂っています。展開はいたってシンプル、しかしメロディは捉えがたいズレが感じられます。私は初めて聞いた瞬間に心を鷲掴みにされてしまいました。

ちょっと間の抜けたプラック、思いの外響かないコーラスが奏でるコード、随所に散りばめられた妖しい気な音。それらが絶妙に混ざり合って、この古めかしくノスタルジック空気を作り上げています。

 

そう、ノスタルジー

 

これこそがWebcoreの中核となるものです。

 

先に言っておきますと、Webcoreとは音楽ではなく美学が中心となっています。

以前紹介したリミナルミュージックやドリームコアを思い出していただければわかりやすいと思いますが、中心に美学があり、それらを表現する一助として音楽が用いられています。

つまり、もともとはWebcoreという音楽ジャンルはありませんでした。

誰かがWebcoreの美学を表現する上で、「この曲はWebcoreっぽいからWebcoreとラベリングして使おう」と考えたことが始まりです。そこからWebcoreとラベリングされ、まとめられた曲たちが人気を博していくにつれて音楽ジャンルとしても扱われ始めたという訳ですね。

まあ他の美学を取り巻く音楽ジャンルは大体このような流れをしています。

Webcoreとして作られた曲ではなく、他人からWebcoreとレッテルを張られた曲。それが本来の姿なのです。

クロノトリガーというゲームの「時の回廊」という曲が解りやすい例です。この曲もWebcoreの代表みたいな扱いをされていますが、どう考えてもゲームミュージックですよね。ですがWebcoreっぽいのでこれはWebcoreとして扱われています。

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言わずと知れた、ゲームミュージック史に名を遺す名曲。もはや語るまでない。

 

 

では、そのWebcoreっぽさとは何なのでしょうか。

アマゾンの奥地に行ってもわかるかは微妙なところです。

 

ですので、普通に画像検索した方がいいですね。一発で大体どんなものかわかります。

見た方は解ると思いますが、Webcoreとはインターネット初期のノスタルジーを懐古する美学です。

解りやすくシンボルを挙げるなら、昔のウェブサイトだったりブラウザウィンドウ、コンピューターゲーム等、インターネット初期を想起させる画像や作品のことです。

他にはピクセルアートやGIF画像、鮮やかなグラデーションやグリッジがかけられた画像なども挙げられます。つまりは初期のウェブサイトでよく見られたものそのままです。

 

ノスタルジーを懐古するというのがどういうことか。考えてみれば簡単な話です。

皆さんが子供のころに遊んでいたおもちゃ、例えばベイブレードだとか、そういったものを見ると、懐かしい気持ちになりますよね。あの頃は良かったなぁとか、ちょっとした郷愁を感じたり。

単純にそれだけのことです。

 

ここではおもちゃではなくてインターネットがその対象に変わっているだけですね。昔目にしていたインターネットの姿を見て、懐かしむ。それがWebcoreの目的です。

まぁもっと詳しく言うなら企業やブランドがあふれ、今の洗練されすぎているデザインや厳格化されているインターネットと比べて、初期のインターネットはもっと煩雑でした。つまるところ自由で個性的だったわけです。それに対する憧憬なんかも混じってくるわけですが……まあややこしいので知りたい人だけ調べてみてください。

 

そんなことよりWebcoreのシンボルですが、どこかで見覚えがあるような気がしませんか?

華美なグラデーション、コンピューターゲーム・グラフィックやグリッジ。初期のウェブサイトなんかでは、よくアニメのピクセルアートなんかもありましたね。

 

これは……。

 

Vaporwaveですね。完全に。

Vaporwaveのアートワーク的特徴と言えば

華美なグラデーション、コンピューターゲーム・グラフィックやグリッジ、そしてアニメ。

完全に一致しています。

 

そうです。

WebcoreはVaporwaveと近しいところが結構あります。

ですので、しばしばVaporwaveの曲がWebcoreとして扱われることもあります。Vektroidとか以前取り上げたアーティスト、2814なんかもそうです。

これなんかそうですね。

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ひたすらにクールな一曲。深いリバーブとリフレインの波に翻弄され、気が付けば未来的な郷愁という不可解な感覚に陥っている。

 

 

とはいえ別にどちらかがどちらかの内側にいるとかではなく、ジャンルとして境界が少し被っているぐらいの感覚ですね。ちょっと年の離れたお隣さんみたいな。どちらもジャンルとしては結構幅が広いというか、無節操なところがあるので、余計に被っている所があるのでしょうね。

それはお互いの曲を聴いてみれば解ります。

Vaporwaveはもっとゆったりした曲が多いですし、Webcoreは深いリバーブやサンプリングなんかは用いられていません。

じゃあなんで言及したのかというと、ちょっと興味深いところだったからです。この二つはシンボルや美学的テーマに重なる部分が多いのにもかかわらず、その音楽的内容には結構違いがあります。

あくまで推察ですが、音楽が先か美学が先か、という点がこの二つを明確に違うものにしているのだと思います。Vaporwaveは音楽から発展してそれからビジュアル面が変化していったものです。Webcoreは美学的面から選ばれた音楽が原点です。そいいう面で見れば違うのも当然ですね。

 

これ以上は話が本題から外れていくので、話を戻しましょうか。

 

Webcoreがどんな美学かは何となく解ったと思います。ではそこから、どんな音楽が分類されるのか、その特徴とは何なのかに迫ります。

 

結論から申し上げますと、

 

良く解んないです。

 

まあ音楽ジャンルではよくあることですね。

音楽ジャンルは数が多ければ領域が重なることも多いし、特に美学に関係するジャンルだと、その美学っぽさを感じるかどうかというのには個人の感覚によるところが多いです。

要は誰かがこれはWebcoreだと言ってしまえば、周りの人もそうかも……ってなるわけです。明確な基準がないため当然ですね。

特にWebcore扱いされている曲を見てみると、ジャンルの幅がかなり広いのが解ります。先ほど紹介したVaporwaveやゲームミュージック、Ambientやロックなんかもありますし、かなり激しめのDnBなんかも含まれていたりします。

まさに昔のインターネットの如き煩雑さですね。

 

ですので唯一言えるのは、聴いていてインターネット的な懐かしさを感じる曲、といったところでしょうか。このインターネット的というのもだいぶ曖昧ですが。

 

結局ごちゃごちゃと書いてきましたが、要は聞き手がWebcoreを感じれば、その曲はWebcoreになる。それだけです。とんでもないですね。

 

皆も自分だけのWebcoreを見つけよう!(やけくそ)

 

 

今回はここまでです。最後にいくつか紹介して終わりましょう。

 

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使われている音のすべてが可愛らしく、いい意味で古さというか安っぽさを感じられる。昔どこかで聞いたことあるはずなのに、どこで聴いたのかは思い出せない。まさしくWebcore

 

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バックルームとついているので、liminalでもあるのかもしれない。しかし、かすかに漂う古めかしきインターネット臭は、この曲がWebcoreであることを主張している。

 

なんというか、音楽としても割と不思議なタイプの曲が集まっていて面白いジャンルだと思います。こういう雰囲気が好きな方は調べてみてください。新しいジャンルにも出会えるかもしれませんよ。